ドクターコラム 女性の肺がん

呼吸器外科 宮元 秀昭

2022年8月23日掲載

2018年の新規肺がん罹患者は約4万人。死亡者数も急増していて、同年は約2万2000人が肺がんによって亡くなりました。最近は女性の肺がんの増加が日本人全体の肺がん死亡者数増加の大きな要因となっています。

肺がんの一番の原因は「喫煙」であることは言うまでもありませんが、非喫煙者の肺がんが現在注目を集めており、環境、職業、大気、遺伝子、性が検討されています。非喫煙者の肺がんは現在、がん死の第7の原因で、世界で肺がん患者の25%が非喫煙者と推定されています。

女性の肺がんは先進国では、女性の社会進出もあり、喫煙と大きく関係しています。米国では過去42年間で男性の肺がんは36%減少したのに対し、女性は84%増加しました。肺がんに罹患した女性のうち約20%が非喫煙者でした。それに対して、女性非喫煙者肺がんの割合は東アジア・南アジアで高く、60-80%です。日本の女性は喫煙者も、非喫煙者も肺がんのリスクが高いのです。

喫煙以外では受動喫煙が大きな原因であることはご存じのとおりですが、「タバコと無関係なら肺がんにはならないのでは?」と考える女性も多いかもしれません。しかし、女性ホルモンが肺がんに関係することが指摘されています。女性ホルモンであるエストロゲンは、肺のがん細胞の増殖を直接促進したり、肺がん細胞中にあるエストロゲン受容体に、エストロゲンがくっつくことによってがん化を促進したりすることにより、肺がんの発生にかかわると考えられています。

喫煙以外では受動喫煙が大きな原因であることはご存じのとおりですが、「タバコと無関係なら肺がんにはならないのでは?」と考える女性も多いかもしれません。しかし、女性ホルモンが肺がんに関係することが指摘されています。女性ホルモンであるエストロゲンは、肺のがん細胞の増殖を直接促進したり、肺がん細胞中にあるエストロゲン受容体に、エストロゲンがくっつくことによってがん化を促進したりすることにより、肺がんの発生にかかわると考えられています。

初経から閉経までの期間が長い場合、高濃度のエストロゲンに長期間さらされるため、それが肺がんリスクの上昇に関連した可能性があります。卵巣を摘出するなど外科的処置によって閉経した女性は、2.75倍も腺がんのリスクが上がったという研究報告もあります。外科的処置によって閉経したことで、急激にホルモンの変化が起きたり、術後のホルモン剤の服用などがリスクを上げている可能性があるとしています。

  • 喫煙女性はもちろん、受動喫煙でタバコを吸ったことがなくても、初潮から閉経の時期が長い(36年以上)、あるいは手術により閉経した経験のある方は、ぜひ、呼吸器科を一度受診してみてはいかがでしょうか。